2.楠瀬タクヤ スペシャルインタビュー

 

 

──Hysteric Blue解散後はどんな7年間でしたか?

 

タクヤ「解散する前からShingっていうバンドをやってたんです。ヒスブルとは音楽性が全然違くて、ダークでへヴィーで変拍子で。それを2004~2005年ぐらいまでやって、後は自分のバンドを常に一個か二個持ちながら、サポートをしていました。街のライブハウスでやってるような規模のバンドにヘルプで参加してるから、ギャランティも発生しないような仕事も多々あった。今思い返せば種蒔きであり修行の日々でしたね。デビュー前の下積み期間がない分、実力も知識もないという負い目があったんです。だから頑張ろうと思ったし、音楽で得た収入がすべてなくなるまでは音楽に投資していいと決めて、バイトはせずに音楽に集中しました。その後、いろいろなご縁があって舞台の裏方の仕事させてもらったりして、とにかく音楽の仕事なら何でもやろうと。何でも屋さんになった7年間かもしれない。それは今もそうです」

 

 

──Screaming Frogsについてはどんな印象を?

 

タクヤ「正直言うと、音楽性的には僕にとってあんまり面白くないなと。彼女がヒスブルでできないものを求めてやっているのだから、僕の趣向とは違ったものをやっているわけで。食わず嫌いもあったけど、やっぱりピンと来なかった。だから単純にTamaちゃんのソロだと思ってました。当時は僕もRed Hot Chili PeppersとかTOOLとかラウドだったり重い音楽が大好きになって、お互いに疎遠になった時期だった。それが2009年に、佐久間正英さんから『鋼の錬金術師』のキャラ・ソングの作詞依頼が二人に来て、本当に久しぶりに再会したんですよ」

 

 

──その後にScreaming Frogsに参加することになって…。

 

タクヤ「何ででしょうね? 二度とないと思ってたのに。だから世の中に“絶対”なんてないんです。何が起こるかわかんないんです。腐れ縁だったんですね(笑)。ただ、最終的にScreaming Frogsには僕のほうから声を掛けて参加したと思うんです。その前にはメンバー加入を頼まれたのに断ったりもしているから…時期とタイミングというのがいかに重要かってことですよね。ドラマーがはっきりと決まらないScreaming Frogsは停滞状態だったから“俺が入ればライヴができるんちゃうかな”っていう時期が来て。自分もドラマーとしてのステージが増やせるし、ライブハウスの横のつながりでブッキングもできる。それで参加が決まってセッションを重ねると“あ、やっぱTamaちゃんは歌手としてプロなんだな”と。基本的なことがしっかりできていて、意思もある。さらに僕の方もあらゆる人達とセッションを重ねて経験を積んできたことによって彼女の苦手な部分を指摘できるようになった(笑)」

Tama「ふふふ。昔は佐久間さんがそれをやってたから(笑)。“歌がちょっと変やな”と思っても、それがピッチ(音程)のせいか何なのかわからなかっただろうし」

タクヤ「そうそう。昔は知識も技術もなかったですから」

 

 

──sabão(シャボン)結成の経緯を教えてください。

 

タクヤ「非常に協力的で僕らのことを親身になって考えてくれる音楽出版社の方がいたんです。その方の尽力のおかげでパチンコCR『セクシーフォール』タイアップの依頼が来て。昔リリースしてた「春~spring~」も「なぜ…」も廃盤になっていてそれが僕は悲しかった。曲に罪はないと思っていた。それを新録することで配信の土俵に出せてあげられて、しかも新曲まで発表できて本当に良かったです。Screaming Frogsでも曲を書いたけど、あっちの音楽性と自分の音楽性をどう掛け合わせるかが難しくて。でもsabãoを僕のソロということにして、Tamaちゃんに手伝ってもらうという形と捉えたら、頭の中がハッキリと分けられたんですよね。Screaming FrogsはTamaちゃんのソロ。そこでは彼女が100%考えたことを僕がやる。その代わり、sabãoでは僕の考えた100%を彼女にやってもらう。僕の中ではこの考え方が一番健康的だったんですよ」

 

 

──そんなsabãoはどんな存在ですか?

 

タクヤ「僕のソロ。でも僕の歌なんて誰も聴きたくない(笑)。みんなが一番求めているのは、僕の作った曲をTamaちゃんが歌うこと。ただ、作品ごと、アルバムごとに曲調が違ってもいいですね。作品がたまればたまるほど取りとめがなくなると言うか、方向性も違うし、メンバーも変わる。その全部をつなぐのは、僕のメロディ・ラインと彼女の歌だけ。それくらいシンプルでいいと思っているんです」

 

 

──では、Tamaちゃんはどんな存在?

 

タクヤ「Tamaちゃんは…Tamaちゃんです。いいヴォーカリストです。悔しいけど」

Tama「悔しい…(笑)」

タクヤ「はははは。自分もいろんな音楽を勉強してきて、いろんな音楽に携わってきたけど、Tamaちゃんと僕が一緒にやることはひとつの正解だったんです。それがようやく認識できた。インディーズ・バンドやって、車で全国をツアーで回って、それでも誰にも届かなかった時もある。でも今回はいろんな人が協力してくれて、ニュース・サイトの記事が何100とヒットされて、“あの二人、また一緒にやってる”って話題になって、twitterとかで「ありがとう」「待ってました」って声がダイレクトに届いて。やっぱり最大効果を発揮するのがこのコンビネーションだった。仕事じゃない日に遊ぼうとか思わないけど(笑)、仕事となるとお互いに考えてることがすぐわかる。他にこんな人はいない。だからTamaちゃんは最高のパートナーですね」

 

 

 

○次回はTamaとタクヤ、二人によるインタビューをお届けします。

 

 

 

text by 柳村睦子